インプラントは骨に直接埋め込む治療法ですが、骨自体が足りない場合は「造骨」という治療を行います。
一口に造骨治療といっても、骨造成や骨移植など複数の方法があり、その方の顎骨の状態にあわせて対処していきます。
ここでは造骨治療の種類や方法などを詳しくご紹介していきますので、骨が足らなくてインプラントを諦めかけていた方も、ぜひ参考にしてください。
目次
造骨治療が必要な場合
造骨治療が必要なのは、インプラントを支えるための土台となる顎骨の高さや厚みが足りない場合です。
もしも骨の厚みや高さがないままインプラントを入れてしまうと、インプラントが骨からはみ出て口内に露出することになってしまいます。
そんなことになったらギョッとする見た目になってしまいますし、何より口内にインプラントがむき出しになっていては衛生的にも問題です。
造骨治療を行っていない歯科医院では、顎骨が足らないと断られてしまうことがあります。
しかし、はじめに受診した歯科医院で断られてしまっても、対応できる歯科医院もあるので、造骨治療を行っている歯科医院を探すのがおすすめです。
造骨治療の種類
ここでは、当院が行っている造骨治療の種類をご紹介します。
当院では、その方の顎骨の状態などに合わせて、6種類の造骨治療を行っています。
- ・ソケットリフト
- ・サイナスリフト
- ・GBR(骨組織誘導再生法)
- ・ソケットリフトプリザベーション
- ・CTG(結像組織移植術)
- ・スプリットクレスト(リッジエクスパンジョン)
では、ひとつずつ説明していきますね。
1.ソケットリフト
ソケットとはネジをねじ込むための受け口を指します。電気のソケットというと、イメージしやすいでしょう。インプラントをネジに例えると、それを埋め込むための穴ということになります。
全体的には骨の厚みが十分にあるものの、インプラントを埋入する部分の骨だけが少し足りない時に、インプラントを埋めるための骨を増やすのがソケットリフトです。
骨の構造を思い浮かべてほしいのですが、上顎と鼻の脇から下方にわたって、上顎洞という空洞が広がっています。しかし、骨の厚みが足らないと、インプラントが上顎洞に突き出てしまいます。
そこで、上顎の下から小さな穴を開け、上顎と上顎洞との間にごく小さな隙間を作って、骨を増やしてインプラントを埋入する穴を確保するのです。
多くの場合、上顎の奥歯の骨量が足りないときに行います。
骨は、人工骨といって人工の補填材を使う場合と、自分の別の部分の骨を少し削って補填材にする場合があります(自家骨)。
2.サイナスリフト
サイナスリフトは、ソケットリフトが使えない時に用いられます。
全体的に上顎と上顎洞との間が狭く、広範囲で隙間を作りたい時の治療法です。
ソケットリフトがピンポイントだとすると、サイナスリフトは空間と考えると良いでしょう。
サイナスリフトは上顎の側面から穴を開けて、隙間を作って骨を増やします。
補填する骨は、ソケットリフトと同じで人工骨や自家骨を使います。
3.GBR(骨組織誘導再生法)
骨の幅や高さがない場合、再生を促す医療用の膜を使って骨を再生する方法です。
骨が再生するのを誘導することから、骨組織誘導再生法とも呼ばれています。
骨を増やしたい部分に人工の骨を補填し、その上から医療用の特殊な膜を被せて、補填した人工骨が骨と同化するのを待つのです。
この特殊な膜のことをメンブレンと呼びますが、そのまま吸収されるタイプとあとで取り除く非吸収タイプがあります。
非吸収タイプを使う際には、取り除いた後にそのままインプラント埋入手術をすることが多いです。
4.ソケットプリザベーション
抜歯をしなければならない状況のとき、抜歯して空いた穴に人工骨を入れて、骨の吸収を最小限に抑えるための治療法です。
抜歯した部分がもともと歯周病の場合や、骨が大きく失われた場合にも用いられます。
ソケットプリザベーションを行うと、骨の吸収を抑え、インプラントを確実に埋入できるようになります。
5.CTG(結像組織移植術)
歯ぐきの厚みやボリュームが足りない場合に用いられる治療法で、簡単に言えば、歯ぐきの移植です。
歯ぐきのボリュームが足りないと、インプラントが透けて見えたり、むき出しになってしまったりする可能性があります。
歯ぐきから骨やインプラント体が見えるなんて、ちょっとゾッとしてしまいますね。
治療方法としては、患者さん自身の口内から歯肉の組織のみを採取して移植を行い、歯肉を安定させます。
6.スプリットクレスト(リッジエクスパンジョン)
骨の幅が少ない・顎骨が痩せてインプラントを埋入できないときに行います。
骨の先端に切り込みを入れ、専用の器具で骨を開いてインプラントを埋入します。埋入した周りのスペースには人工骨を補填します。
ほかの造骨手術よりも負担が少ないですが、骨が柔らかいことや骨髄が十分にあること、骨の厚みが3mm以上あることなどの条件が揃っていなければなりません。
人工骨と自家骨の違いは?
造骨治療には必須の補填用の人工骨や自家骨。簡単にいえば、人工骨と自家骨の違いは100%作られたものであるか自分の骨を利用したものかどうかです。
しかし、近年では人工骨の開発は目覚ましく、骨との親和性があるだけでなく、再生を誘導するような優れたものが次々と開発されています。
自家骨はインプラントの場合、ドリルで穴を開けた際に出る骨の粉などを集めておいて作ることも多いです。
骨が足りなくても諦めないで!インプラントができる可能性があります
造骨治療はインプラントを埋めるための骨が足りない時に行う治療方法です。
治療法にはご紹介したように数種類の方法がありますが、その方の顎骨の状態や歯周病など口内の状況によって、どの治療を選択するかが変わります。
なかには非常に困難なケースもありますが、それは診断してみなければ分かりません。
他院で断られてしまっても、インプラントができるケースもたくさんあります。まずはお気軽にご相談ください。
- ◆この記事のまとめ
- 1.ソケットリフトは上顎の一部分だけ骨が足りないときに造骨する治療
- 2.サイナスリフトは上顎の広範囲の骨が足りないときに造骨する治療
- 3. GBR 法は特殊な膜を使って骨の再生を誘導する方法
- 4. ソケットリフトプリザベーションは抜歯や大きく骨が失われたところに骨補填材を入れる方法
- 5. CTG はご自身の組織を使って歯ぐきを移植する方法
- 6. スプリットクレストは骨の幅が狭いときに専用器具で骨を広げてインプラントを埋入する方法