心臓ペースメーカーや植込み型の除細動器を利用している方は、「インプラントにしたいけど機械に影響があるのではないか?」と心配されると思います。
インターネットで調べると、「できる」という歯科医院もあれば、「できない」という歯科医院もあって、どちらを信じていいのか迷ってしまいますね。
そこで、ここでは植込み型の心臓ペースメーカーとインプラントとの関係を、わかりやすく、詳しくお伝えしていきます。
目次
1.心臓ペースメーカーや植込み型除細動器を利用しているとインプラントはできないの?
結論から言えば、すべての方にできるとも、また100%できないともいい切れません。歯にものが挟まったような言い方で申し訳ないのですが、個人個人によって状態が異なるからです。それは一体どういうことなのか、次で詳しくご説明します。
1-1.機種や設定によってインプラントができるかどうかが異なる
機種や設定とは、以下のようなことです。
- ・使っている機器が昔のものか今のものか
- ・設定は人によってそれぞれ
医療の分野は日々発展しており、体内に埋め込んで使う医療機器もまた、日々進歩して精度を増しています。
昔の心臓ペースメーカーは電波などに弱く、生活の中でも影響を受けることがありました。
しかし、現在のペースメーカーは電波を受けにくい設計がなされており、例えばスマートフォンなども埋入場所から15cm以上離していれば影響を受けないとされています。
また、ペースメーカーは、1.心臓に電気刺激を奮起し、2.それを感知し、3.心臓の動作の有無でサポートするかどうか決めるという3つの働きがあり、細かい設定は人によって様々です。それがインプラント治療に影響があるかどうかにもかかわってきます。それゆえ、ひと括りにして「できる・できない」とは言えないのです。
1-2.内科医ができると診断すればできる
では、どうしたらご自分がインプラント治療できるのかどうかが分かるかといいますと、内科医に尋ねていただくのが一番です。
当院でも、担当医の許可があればインプラントはできるとしています。
先ほど設定について触れましたが、設定や病気の症状などによって、インプラントの手術ができるかどうかが変わってきます。それは歯科医師だけの判断では難しいので、必ず内科の担当医に相談してください。
2.なぜ心臓ペースメーカーや植込み型除細動器を利用しているとインプラントはNGといわれるのか
そもそも、なぜ体内医療機器を埋め込んでいるとインプラントができないといわれてしまうのかというと、大きく2つの理由があります。
- ・外科手術に伴うリスクがある
- ・電気メスが影響を及ぼす
それぞれ、詳しくご説明しますね。
2-1.外科手術を伴うのでリスクがある
外科手術は当然ですが出血を伴います。出血すると、お口の中の細菌が体内の人工物に付着して感染するというリスクがあります。
歯科医院の感染対策はそれぞれなので、このようなリスクがあるということは頭に入れておくと良いでしょう。
2-2.電気メスが体内医療機器に影響を及ぼす
ペースメーカーや植込み型除細動器は、電流を使って心臓に刺激を送るしくみです。
そのため、電気メスの使用はできません。電気メスは電気を利用して患部を切る道具だからです。国立循環器病研究センターでは、ペースメーカーなどで使える電気関連の機器について、こう記しています(医療機器関連のみ抜粋)。
ペースメーカーに影響しないもの:補聴器、血圧測定器、歯科用タービン(切削機)
注意をすれば使えるもの:体脂肪計、電気マッサージ器
影響するもの:MRI、電気メス、高周波温熱機器など
「国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス 表1.各種機器のペースメーカーに対する影響」参照
もし、内科の担当医からインプラント治療ができると判断されても、それを歯科医師に伝えていないと電気メスを使ってしまう可能性があります。普段は不自由なく普通に生活できているので、つい忘れがちになってしまうこともあると思いますが、くれぐれも、ペースメーカーを利用していることを伝え忘れないようにしましょう。
2-3.インプラント自体は体内医療機器に影響するの?
結論を言うと、インプラント体に使われているチタンは、電気の影響をほとんどうけません。
無事埋入できたとして、インプラント体は金属なので影響はないの?と心配される方もいらっしゃると思いますが、その心配はほぼ不要です。
チタンは生体ととても相性がよく、人工弁や人工関節にも使われているほどです。
3.インプラントをする際に注意すること
心臓ペースメーカーや植込み型除細動器を利用している方がインプラント治療を受けたい場合には、注意しなければならないことがあります。
- ・内科医に相談する
- ・体内医療機器を使っていることを伝える
- ・ペースメーカー手帳を提示する
3-1.内科医に相談する
インプラント治療を受けたいと思ったら、まずは内科医に相談しましょう。
もう何年もペースメーカーを使っていて安定しているから大丈夫、などと自己判断をするのは危険です。
特に、外科手術を伴う場合や、整体などで電気関連の施術を受ける場合は、思わぬ影響を受けることがあります。
ペースメーカーは心臓を動かす大事な機械ですので、他の治療を受ける時にはまず相談することをおすすめします。
3-2.体内医療機器を使っていることを伝える
内科医から承諾を得たら、歯科医師にも必ず植え込み型のペースメーカーや除細動器を使っていることを伝えてください。
先述したとおり、電気メスは心臓ペースメーカーなどには使用できません。また、感染対策もより慎重に行う必要があります。
万が一にも誤って事故などが起きないように、必ず伝えましょう。
4.ペースメーカー手帳を提示する
ペースメーカーを利用している方は、ペースメーカー手帳をもらっていると思います。
インプラント治療を受けるときには、持って行くようにしましょう。ペースメーカー手帳があると、スムーズに治療が進められます。
手帳では、定期検診や状態などの情報、内科の先生や医療機関などが分かります。
インプラントできるかどうかは状況によって異なります
植え込み式の心臓ペースメーカーを利用している方がインプラント治療できるかどうかは、その方の状況によって異なります。
インプラント自体がペースメーカーに影響を及ぼすことはありませんが、治療に伴う手術にはリスクがあるからです。
インプラント治療を希望する際には、必ず内科医に相談し、歯科医師にも利用している旨をしっかりと伝えましょう。
- ◆この記事のまとめ
- 1.古い機種や設定によってできるかどうかが異なる
- 2.内科医の診断でOKが出ればインプラント治療ができる
- 3.外科手術は出血などを伴うためリスクが高い
- 4.電気メスは体内医療機器に影響を及ぼす
- 5.インプラント自体は埋入しても悪影響を及ぼさない
- 6.インプラント治療を受ける際には、体内医療機器を利用していることを必ず伝えることが重要