慢性的な病気や体質によってはインプラントが受けられないのではないかと心配される方が多いです。
なかにはもう諦めてしまっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、ご安心ください。
豊富な経験と高い技術をもつ医師が在籍する当院では、他院で慢性疾患などが理由で断られてしまった方でもインプラント治療が可能な場合があります。
ここでは、日本口腔インプラント学会のガイドラインを基に、インプラント治療で注意すべき病気を詳しくご説明していきます。
もしも持病や過去に病気にかかったことがある方は、ご自分が当てはまるかどうかを確認してみてください。
目次
1.インプラント治療の際に注意が必要な疾患
インプラントは骨にインプラント体を埋める外科手術が必要です。そのため外科手術に耐えうる体力や状態は必須となります。
日本口腔インプラント学会が2016年に発刊した「口腔インプラントの治療指針」というガイドラインによると、インプラント治療をする際に注意しなければならない疾患について、以下のような病気が挙げられています(禁忌を除く)。
- ・高血圧
- ・心筋梗塞・狭心症・心臓弁膜症など心臓の病気
- ・糖尿病
- ・骨粗鬆症
- ・気管支喘息
- ・貧血
- ・リウマチ・膠原病などの自己免疫疾患
上記の病気はインプラントができないのではなく、注意が必要だとしています。では、具体的にはどのような注意が必要なのか、ひとつずつ詳しく説明していきますね。
1.高血圧
高血圧の方は、血圧が十分にコントロールされていればインプラント治療は可能です。
ただし、「これから外科手術をするんだ」と思うだけで不安や緊張などを感じて血圧が不安定になることがあります。また、通常の局所麻酔には、少量ですが血圧を上昇させる成分が含まれています。
高血圧の方の場合には、ストレスを感じることのない静脈内鎮静法などを用いて治療にあたります。静脈内鎮静法の麻酔をしている間に血圧のコントロールをすることも可能なので、安全にインプラント治療を受けていただけます。
【静脈内鎮静法とは】
通常の麻酔と異なり、点滴で麻酔を少しずつ流し続ける方法です。この方法だと大変リラックスし、うたた寝のような状態のうちに手術を終えることができます。
2.心筋梗塞・狭心症・心臓弁膜症など心臓の病気
現在心筋梗塞や狭心症などの治療中の方は、かかりつけ医と相談し、かかりつけ医からの許可があればインプラント治療が可能です。
過去に心筋梗塞をしたことがある方も、現在の心臓の状態によっては外科手術が難しい場合があるので、かかりつけ医に相談してください。
狭心症や不整脈などがある方は、外科手術の途中で状態が急変するリスクがあるため、かかりつけ医と綿密に連携をとりながら治療をすすめていきます。
また、心筋梗塞や狭心症などの既往歴がある方は、血液をサラサラにする薬を飲んでいると思いますが、こういった薬は手術中に出血が止まりにくいというリスクがあります。
そのため、十分に止血処理をしながら行う必要があるので、薬を服用している方は必ず事前に申し出てください。
心臓弁膜症などで人口弁膜置換手術を受けた方、ペースメーカーを使っている方を含め、当院ではほとんど切らずにインプラントを入れる高い技術の方法も行っています。この方法では体に負担をかけません。
3.糖尿病
糖尿病の方は手術中に血糖値が不安定になる・感染しやすいといったリスクがあり、術後もインスリン注射のタイミングが通常と異なるなど、管理に注意が必要です。
かかりつけ医との連携を十分に行った上で、状態が安定しているときに行います。
また、腎不全や心血管病変などの重篤な合併症がないことが条件となります。
4.骨粗鬆症
骨粗鬆症の方はかかりつけ医と相談しながら、インプラント治療を進めることが可能です。
骨粗鬆症の場合は骨密度が低いとインプラントが骨に固定しづらいといった問題がありますが、インプラントを埋める周囲の骨密度を高めるなどの方法があります。
ただし、ビスフォスフォネート系の薬を使われている方、または使われていた方は、一度ご相談ください。
治療前には3ヶ月程度、服用を中止しなければならないので、治療が可能かどうかかかりつけ医と相談する必要があります。
5.気管支喘息
気管支喘息をお持ちの方は、状態が良好な時期であればインプラント治療をすることができます。
ただし、手術中は水が喉に流れ込んだりちょっとした刺激臭などによって発作が誘引されたりすることがあります。このようなストレスを避ける必要があることと、投与するお薬の種類に気をつける必要があるため、気管支喘息の方も事前にお伝え下さい。
8.貧血
鉄欠乏貧血やビタミンB12・葉酸などの不足による貧血の方は、手術の際に意識を失ってしまうおそれがあり、感染リスクも高いです。
貧血が改善され、かかりつけ医の許可があればインプラント治療をすることが可能です。
9.リウマチ・膠原病などの自己免疫疾患
リウマチや膠原病、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、天疱瘡などの自己免疫疾患がある方は、長年ステロイドの薬を使っていると思います。
ステロイドを長期間使っている場合、手術中にストレスによるショックを起こすリスクが高いです。
かかりつけ医と綿密に連携し、事前に薬の量をコントロールして安全に手術を行えるようにする必要があります。
ただし、術後に感染しやすいと思われる方や、ビスフォスフォネート系の薬を使っているときには、治療が難しい場合もあります。
その他の全身疾患
上記で挙げた以外の病気をお持ちの方もいると思います。
その他の病気についても簡単にご説明します。
肝硬変などの肝機能障害
肝硬変や重度の肝臓病など,肝機能障害の方は手術中に出血が止まらなくなる恐れがあります。
また、インプラント治療後に飲む薬によって、肝機能を低下させてしまうといったことも考えられるため、インプラント以外の治療法をおすすめします。
腎不全などの腎機能障害
腎臓の疾患をお持ちの方は、免疫力が低下しているため手術に耐えるだけの体力が不足しています。インプラント治療のあとの傷が治りにくい・出血が止まりにくいといったリスクもあるため、インプラント治療は難しいでしょう。
ガンの治療中の方
ガンの治療で放射線治療を行っている方や、過去に治療を行っていた方は、骨の治癒力が低下している可能性があります。そのため、インプラント治療はあまりおすすめできません。
神経症やうつ病など精神疾患のある方
重度の神経症やうつ病、統合失調症などを持つ方は、手術に際して極度に不安になったりすることがあり、ガイドラインでは“感情面で長期安定が得られなければインプラント治療は禁忌である”とされています。
インプラント治療が受けられるかどうか、一度かかりつけ医にご相談ください。
インプラント希望で全身疾患のある方も一度ご相談ください
インプラント体を埋めるのは口内ですが、治療には出血を伴う外科手術が必要です。血液をはじめ様々な要因が絡んでくるため、高い医学的知識と専門医との連携が必要です。
とはいえ、全身疾患を持つ方はすべてインプラントができないということではありません。
できるかどうかは、事前検査、現在の状態、かかりつけ医の許可などで総合的に判断されます。
他院で全身疾患を理由に断られてしまった方も、一度ぜひご相談ください。
- ◆この記事のまとめ
- 1.高血圧、心臓病、糖尿病、骨粗鬆症、気管支喘息、貧血、自己免疫疾患は症状や時期などによってはインプラント治療が可能
- 2.可能な場合もかかりつけ医と綿密に連携しながら進めることが重要
- 3.それぞれの疾患において術前・術中・術後の注意が必要となる
- 4.病気が完治している場合も、既往歴がある場合は歯科医師に伝える
- 5.飲んでいる薬は必ず歯科医師に伝える