インプラントにおけるタバコの弊害はよく知られるところですが、そのような説明をした時、「電子タバコやカートリッジ式ならいいですか?」と質問されることがあります。
タバコはすぐにはやめられないもの。普通の紙のフィルターがついた巻きタバコを吸っている方は、どうにかしてタバコを吸い続けたいと思うでしょう。
そこで、電子タバコや加熱式タバコはインプラントに影響があるのかどうかについて、データや研究結果を元に理論的にご説明します。
インプラントを検討している方や、現在インプラントを入れていてタバコを吸っている方は、ぜひご一読ください。
目次
電子タバコと加熱式タバコの違いとは?
現在日本で買うことのできる電子式タバコや加熱式タバコはたくさんあります。
しかし、電子タバコと加熱式タバコは同じようなものなのでは?と思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、両者の構造や成分は全く異なります。その違いを詳しくご説明しましょう。
加熱式タバコの特徴
加熱式タバコは、カートリッジ内の水蒸気でタバコ葉に間接的に熱を加えて吸うというしくみです。タバコ葉を使用しているため、タバコ独特な味や香りを楽しめるとして人気があります。
内蔵型の電池でリキッドを熱したり、ヒーターで直接加熱したりしますが、いずれもタバコ葉が入っているというのが大きな特徴です。
煙が少なく、水蒸気がタバコ葉を通過する時に有害物質を90%カットするともいわれていますが、実際の実験では、以下のような結果が出ています。
- ▼アイコス1本あたりの有害成分含有量
- ・ニコチン84%
- ・ホルムアルデヒド74%
- ・アセトアルデヒド22%
低音加熱するため通常のタバコよりはニコチンやタールが少ないと説もあります。しかし、ニコチンは上記の通りで、タールも少量ではありますが含まれていることに変わりなく、インプラントへの影響はあるといえます。
電子タバコの特徴
電子タバコはタバコ葉を使っていないのが大きな特徴です。カートリッジ内に入っている、フルーツ味やコーラ味などのフレーバーの水蒸気を吸い込むしくみです。
一般的には、電子タバコにはニコチンやタールが含まれていないとされています。そのため日本ではタバコとして販売されていません。
ニコチンフリーの表示があってもニコチンを含む電子タバコがある!
海外の電子タバコには、ニコチンが含まれているものがあり、タバコ類として販売しています。そして、平成22年には日本でも厚生労働省から「ニコチンを含有する電子タバコに関する危害防止措置について」としてニコチンが含まれるものもあると注意喚起しました。
独立行政法人国民生活センターの商品テストの結果、含まれていないと表示された商品の11銘柄からニコチンが検出されたと発表されたのです。
▼「電子タバコ蒸気に含まれる有害化学成分」(厚生労働省資料)
このようなことがあってから、一旦はニコチンを含む電子タバコ11銘柄の販売を中止させました。
しかし、その他の銘柄や商品の販売を禁止しているわけではなく、次のような文面が発表されているのみです。
今回の調査対象とならなかった電子タバコにもニコチンが含まれている可能性がありますの で、ニコチンの経口摂取を避けるためには、安易な使用は控えてください。 (消費者庁「電子タバコに関して厚生労働大臣から提供のあった資料及びその対応について)
つまり、現在販売されている電子タバコも、その安全性は不明なのです。
タバコがインプラントによくない理由
そもそも、タバコはなぜインプラントによくないかということも、改めてご説明しますね。
インプラント治療をしてから年月が経っているので、もう以前のように吸っても構わないと思っている方は要注意です。
ニコチン編
ニコチンには、以下のような作用があります。
- ・血管を収縮させる
- ・免疫力を低下させる
- ・歯茎が酸素や栄養不足になり痩せる・黒ずむ
- ・歯肉に炎症が起きやすくなる
- ・血行を悪くし炎症しても出血しにくくなる
- ・唾液量を少なくする
- ・歯の表面を凸凹にし、細菌がつきやすくなる
こんなにあるのかと驚かれたかもしれませんね。ニコチンによる血管の収縮や免疫力の低下は、歯茎の健康が損なわれるだけでなく、インプラントと骨の結合を阻害します。
歯茎の血流が悪くなるとインプラント周囲炎にもなりやすく、かかっても歯茎から出血しないので気づくのが遅れます。
インプラント周囲炎はインプラントの土台となる骨を溶かしてしまうため、症状が進行すればインプラントの寿命も縮んでしまうのです。
タール編
タールは歯の表面にくっついて、歯だけでなくインプラントも着色する恐れがあります。
また、タールには有害物質が60種類以上含まれていて、全身の健康によくないことが知られています。
タールを取り続ければ体全体の免疫力が落ちて、インプラント歯周病になりやすくなります。
インプラント前に必要な禁煙期間
インプラントをすると決まったら、手術の2週間前にはタバコを控えていただきます。
先述したように、タバコにはインプラントと骨の結合を阻害する恐れがあるからです。
普通の巻きタバコや加熱式タバコを吸っている方はもちろん、電子タバコを吸っている方もお控えください。
インプラント手術後に必要な禁煙期間
インプラント手術を行ったあとも、3週間は禁煙するのがおすすめです。
インプラントがしっかりと骨に結合するのには、3〜6ヶ月程度かかります、また、骨が不足していて骨再生の治療をした場合には、さらに期間が必要です。タバコは骨の治癒も遅らせてしまいます。
結論!インプラントをする方は電子タバコでも控えるのがおすすめ
電子タバコの安全性はまだ証明されていません。インプラントをすると決めたら、タバコや電子タバコ、加熱式タバコは一旦禁煙しましょう。
喫煙されている方は、インプラントを機にタバコを辞めることをおすすめします。
どうしてもやめられないという方は、本数を減らしましょう。いくらニコチンやタールが少ない電子タバコや加熱式タバコでも、本数が多ければ吸っている量は同じになります。
- ◆この記事のまとめ
- 1. 電子タバコは原則としてニコチン・タールが入っていない
- 2. しかし、10年前には入っていないと表示された商品から検出された過去がある
- 3. 一旦販売中止になったが現在は不明である
- 4. タバコの成分はインプラントと骨の結合を阻害する
- 5. タバコの成分はインプラント周囲炎になりやすい
- 6. 結論としてインプラントをするなら電子タバコも控えたほうが良い