毎日のインプラントのケアは欠かせませんね。毎食後に丁寧にブラッシングをしている方も多いと思います。
その心がけは大変素晴らしいことですが、歯ブラシだけでなくデンタルフロスを使うと、より確実に汚れを落とすことができます。
ここでは、デンタルフロスの種類や、正しい使い方についてご紹介します。まだ使ったことがないという方は、ここでしっかりとマスターしましょう。
歯ブラシだけでは不十分!インプラントのケア
歯ブラシは歯の表面や歯と歯茎の境目などを磨くのに適していますが、歯と歯の間には入り込むことができません。
しっかり丁寧に歯磨きをしている人でも、約40%の磨き残しが出てしまうという研究結果が、近年発表されました。
磨き残しをなくすことは、健康な歯を持つ方もインプラントを入れている方もともに重要です。しかし、インプラントを使用している方は、特にケアには十分に考慮する必要があります。
ケア不足だとインプラント周囲炎にかかる
インプラントを入れている方は、口内に磨き残しがあるとインプラント周囲炎にかかるリスクが高まります。インプラント周囲炎とは、インプラントの周辺組織が歯周病にかかってしまう病気です。
インプラント自体は人工のものですので、虫歯や歯周病にはかかりません。しかし、血液や神経が通っていない分、元々天然歯に備わっている免疫機能が働かず、周辺組織が病気にかかりやすいのです。
歯周病の原因菌がインプラントと隣の歯の隙間から侵入したとしても、ブロックすることができないので容易にその侵入を許してしまいます。
インプラント周囲炎はインプラント寿命を縮める
歯周病の原因菌は、酸素が苦手です。隙間から入り込んだ原因菌は、より酸素の少ない部分、つまりインプラント体が埋まっている土台の骨に向かって進んでいきます。
原因菌は毒素を出して、柔らかい土台の骨を溶かしてしまいます。土台が溶かされたインプラントは支えを失ってグラグラし、ついには抜け落ちてしまうのです。
インプラント周囲炎の始まりは、プラークです。プラークは主に凹凸がある部分にたまり、中で細菌を繁殖させます。細菌は毒素を出しながら、歯茎がある場合は歯茎から土台の骨へと溶かしますが、インプラントの場合は歯茎がないのでストレートに土台の骨に到達するのです。
プラークをしっかりと除去できれば、インプラント周囲炎も防げます。それには、歯の表面だけでなく隙間や境目の徹底したケアが必要なのです。
デンタルフロスの種類と使い方
インプラント周囲炎を防ぐには、歯と歯の隙間や細かい部分までケアできるデンタルフロスが有効です。フロスは極細のナイロン糸を幾重にも重ねて紐状にしてあるものです。
デンタルフロスには、以下のような種類があります。
- ・ホルダータイプ
- ・糸巻きタイプ
- ・スーパーフロス
それぞれの正しい使い方について、説明していきますね。
ホルダータイプ
ホルダータイプは持ち手がついたフロスです。持ち手があるので、デンタルフロスをはじめて使う方には使いやすいでしょう。
F字型とY字型があり、使う場所によって選びます。
- F字型→前歯用
- Y字型→奥歯用
【持ち方】ホルダーの前方(フロスの近く)を持つと、細かく磨けます。
糸巻きタイプ
糸巻きタイプは全歯どの部分でも使えます。糸巻きタイプにはナイロン糸にワックスがコーティングしてあるワックスタイプと、そうでない普通のタイプがあります。ワックスでコーティングしてあると滑りがいいので、初心者の方におすすめです。
- ワックスタイプの特徴
- ・コーティングしてあるので滑りが良い
- ・ミントの香りなどが加工してあるものもあり、爽快感を得られる
- アンワックスタイプの特徴
- ・コーティングしてないので汚れが絡みやすい
- ・フロスに慣れてきた方向き
では、糸巻きタイプの正しい使い方について説明していきましょう。
1.デンタルフロスを30〜40cm出して切る
30〜40cmはだいたいご自分の指先から肘までの長さが目安です。
2.中指に巻きつける
デンタルフロスの両端を、左右の中指の第2関節に巻きつけます。
こうしたとき、左右の指間の糸の長さは10〜15cmになります。
3.フロスを親指と人差指で持つ
デンタルフロスを両方の親指と人差し指でつまむように持ちます。
左右の指間の糸の長さは1〜2cmです。
4.フロスを磨く位置に当ててゆっくり下ろす
デンタルフロスを歯と歯の間に当て、のこぎりを引くように前後に揺らしながらゆっくりとおろしていきます。
この時、強い力で強引に下ろすと歯茎を傷つけるので注意しましょう。
5.フロスで両側の歯の汚れを落とす
フロスは片方の歯に沿わせて動かし、終わったら反対の歯にも沿わせて同じように動かします。
次の歯と歯の隙間を掃除するときは、糸の位置をずらして新しい部分にして使います。なお、どんなデンタルフロスも使い捨てですので注意しましょう。
場所別の持ち方
インプラントが入っている部分は人によって様々です。上記は基本の持ち方ですが、上の歯、下の歯のそれぞれの持ち方のコツは以下の通りです。
上の前歯
片方の手は親指を上向き、もう片方の手は人差し指を下向きにしてフロスを持ちます。親指が歯の外側、人差し指が歯の内側になるように入れて、フロスを歯と歯の間に入れます。
上の奥歯
両方の人差し指でフロスを支えて、上向きに持ちます。手のひらは外を向いている状態です。片方の人差し指は歯の外側、もう片方は歯の内側になるように入れて、フロスを歯と歯の間に入れます。
下の歯
両方の人差し指でフロスを支えて下向きに持ちます。片方の人差し指は歯の外側、もう片方は歯の内側になるように、フロスを歯と歯の間に入れます。
歯間ブラシ
歯間ブラシとは、金属のワイヤーにナイロンブラシが固定されているものです。
- ストレート型→普通の歯用
- L字型→奥歯用
ストレート型とL字型のものがありますが、ストレート型を自分で曲げてL字型にすることもできます。
【サイズ選びの注意点】
サイズは5〜6段階に細かく設定されています。歯と歯の隙間に無理なく入るものが良いですが、最初はどのサイズを選べばいいかわかりませんね。メーカーによっては初心者向けに全部のサイズが数本ずつ入ったセットなどもあるので、サイズ選びに迷ったらそういったものを利用するのもおすすめです。
※サイズや挿入角度が誤っていると、歯茎やインプラントを傷つけてしまう恐れがあります。使い始めは歯科医院で指導を受けましょう。
- ・糸ようじは別物です!
- 歯間ブラシと似たもので糸ようじがありますが、糸ようじはあくまでも歯と歯の間に挟まった食べカスを取り除くためのもの。「ようじ」なのです。
- フロスと同じ効果は得られないので注意しましょう。
スーパーフロス
スーパーフロスとは、先端が細く固めになっていて、真ん中が太く柔らかいフロスになっているものです。主に、ブリッジの方が使います。
オーバーデンチャーやオールオンフォーのインプラント(入れ歯+インプラント)の方は、人工歯冠と歯茎の間をこれで掃除するのがおすすめです。
半年に1度の定期メンテナンスも忘れずに
毎日のセルフケアはインプラントを長く保つのにとても重要です。しかし、同時にセルフケアではできない部分を補う定期メンテナンスも忘れてはなりません。
定期メンテナンスでは、インプラントが正常に機能し続けるための様々なチェックや清掃を行います。
- ・口内細菌量のチェック
- ・歯茎下がりのチェック
- ・プラークのチェック
- ・専用機器や薬剤による徹底的なクリーニング
定期メンテナンスは、半年に1度程度がおすすめです。
フロスでケアしてインプラントを長持ちさせよう
インプラントを末永く使うには、歯ブラシにデンタルフロスも使用した毎日のケアが必要です。歯と歯の間の汚れを落として、プラークを除去しましょう。
- ◆この記事のまとめ
- 1. ブラッシングだけではケアが不十分
- 2. インプラントはインプラント周囲炎になりやすい
- 3. インプラント周囲炎を防ぐにはフロスが有効
- 4. フロスにはホルダータイプと糸巻きタイプがある
- 5. 糸巻きタイプは磨く部分で持ち方にコツがある
- 6. セルフケアと同時に定期メンテナンスも受ける