以前に根管治療をした部分が再び痛みだした時、根管治療にするかインプラントにするかと選択を迫られて迷うことがあります。それぞれの治療法は全く違うものなので、どんなメリットがあるのか、将来どのようになっていくのかなどを知りたいですよね。
今回は、根管治療とインプラントの選択に迷った時の考え方について、詳しくご紹介していきます。
目次
自分の歯をなるべく残すという考え方
根管治療とインプラントで迷うのは、自分の歯を残すか、それとも人工の歯を入れて以前のような生活を取り戻すかということがポイントになります。
近年では自分の歯をできるだけ残すという考え方が主流になっています。そして、歯の根の病気になった時、最初に考えるのが根管治療です。
根管治療とは
根管治療とは、虫歯が神経にまで達した時に神経を取る、歯の根の先に溜まった膿を取り除くといった治療法です。
根管治療では、以下のような処置が行われます。
- ・感染している部分を取り除く
- ・洗浄・消毒をする
- ・薬剤を詰める
- ・被せものをする
上記のような処置が不十分だと、感染が進んで骨を溶かして膿がたまったり、噛んだ時の痛みや腫れを生じたりすることになります。
また、根管治療は非常に難しく、どのクリニックでも行えるわけではありません。
根管治療をしても、膿が再発することがある
根管治療は非常に難しく、一度治療をしたところが再発することがあります。
根管の形は人によって様々で、細い上に複雑な形状です。特に奥歯には神経が4つあることもあり、それぞれの管が曲がっていたり狭くなっていたりすることもあります。肉眼のみで治療した場合、捉えきれなかったごくわずかな汚れが残っていると、再発してしまうのです。
根管治療で再発しないようにするためには、しっかりと感染部分を除去し、無菌状態を徹底する必要があります。
インプラントは残った健康な歯を守る治療法
では、インプラントは歯を残せない治療法なのかと言えば、そうではありません。インプラントは、患部以外の残った健康な歯を保存することができる治療法です。
ここで重要になるのが、「歯をできるだけ多く残す」という考え方です。悪くなった1本のみに注目するのではなく、全体の歯を総合的に捉え、どの治療法が最適なのかを見極める必要があります。
歯がなくなった時の治療法としては、ブリッジや部分入れ歯という選択肢もあります。ただ、ブリッジは健康な歯を削らなければならず、入れ歯も他の歯にバネをかけることから、健康な歯が弱くなる可能性が高いです。
天然歯を削らない、過度な力を加えないということが全体の歯の寿命を長くするポイントと考えると、インプラントは最適な治療法といえます。
感染した歯の治療が難しくて再発を繰り返すリスクがある場合、インプラントにすれば残った他の歯を守りながら感染が広がることも防げます。
インプラントを選択する時
歯を残せる可能性がある場合は根管治療が優先されますが、どうしても根管治療が不可能な場合はインプラントを選択する方が多いです。
根管治療が難しいのは、以下のような場合です。
- ・歯の根が折れている
- ・歯の根にヒビが入っている
- ・歯肉まで虫歯が侵食している
特に、奥歯がなくなったままにすると、他の歯に負担がかかり、咬み合わせが崩れる・前歯が傾斜するなどの影響が出てきます。
インプラントは天然歯があった時の状態にまで改善することができるので、咬み合わせの崩れや歯並びが悪くなるということがありません。
歯の根の病気でインプラント治療をする時の注意
インプラントは優れた治療法ですが、治療をする前にはいくつかの注意点があります。
事前に虫歯や歯周病の治療をする
インプラントを入れようとする部分以外にも虫歯や歯周病があった場合、まずは虫歯や歯周病を治療することが重要です。
虫歯や歯周病があると、インプラント治療をしても感染してインプラントをダメにする危険があるからです。
特に血液や神経が通っていないインプラントは、感染しても気が付かず、インプラントを支えている骨を溶かしてしまいます。
虫歯や歯周病は感染病なので、インプラント治療の前に口の中からしっかりと取り除いておかなければなりません。
治療後も定期メンテナンスに通う
インプラントは入れたらそれで終わりではありません。半年に1度程度のペースで、定期メンテナンスに通う必要があります。
インプラントが感染に弱いことは先述のとおりですが、一度骨が溶けてしまうと治療が難しく、最悪の場合にはインプラントが抜け落ちてしまう可能性もあります。
定期メンテンスでは、以下のようなことをして、インプラントだけでなく口内全体の健康を守ります。
- ・インプラントの状態をチェックする
- ・口内細菌の数を測る
- ・歯垢や歯石を取る
- ・専門的なクリーニングをする
- ・必要であれば食事指導や生活指導を行う
毎日のセルフケアは、他の歯と同じように歯磨き程度で十分です。セルフケアと定期メンテナンスを並行して行っていくことで、インプラントは半永久的にもたせることが可能となります。
根管治療とインプラントで迷った時のポイント
根管治療とインプラントで迷ったら、様々な治療を複合的に行っている歯医者に相談するのがおすすめです。
例えば、奥歯で根管治療を行った際、再発防止のために被せものをしないという歯科医師もいます。しっかりと根管治療が行われた後に被せものをしなければ、ケアが行き届いて再発を防げるという発想です。
しかし、他の歯より極端に歯の高さが低い状態が長年続くと、咬み合わせが崩れて歯並びが悪くなり、歯ない方向に前歯が斜めに傾いてしまいます。
患部だけの治療を考えると、将来を見越すことが不十分と考えられます。そのため、歯列全体や将来の歯の動きなど、多角的に判断して治療できる歯医者を見つけることが何よりも重要です。
歯医者には、一般的な歯科治療、矯正歯科、インプラントなど、それぞれの分野があります。ひとつの分野のみでなく、それぞれの専門医が常駐しているような複合的な歯科医院であれば、より高度な治療を受けることが可能でしょう。
- ◆この記事のまとめ
- 1. 根管治療は非常に難しく、再発するリスクがある
- 2. 再発すると骨が溶け、噛んだ時の痛みや腫れ、膿が生じる
- 3. 自分の歯をできるだけ残せるのが根管治療
- 4. 歯の根が大きく破折している・重度の虫歯の場合、根管治療は難しい
- 5. 根管治療が難しく、残存歯をできるだけ残せるのがインプラント
- 6. インプラント治療をする場合、事前に虫歯や歯周病を改善する必要がある
- 7. インプラントは治療後も定期メンテナンスの通院が必要