インプラントをしたいけれど、手術が怖い、または不安でなかなか踏み出せないという方がいらっしゃいます。
しかし、ご安心ください。
手術が怖い、麻酔をする時の注射が苦手という方のために、静脈内鎮静法という方法があります。静脈内鎮静法は、リラックスした状態で治療を受けられるものです。
ここでは、静脈内鎮静法はどのようなものなのか、実際にはどのようなことをするのかを詳しくご紹介します。
目次
静脈内鎮静法とは
静脈内鎮静法とは、鎮静効果や抗不安効果がある薬を点滴という形で投与するものです。
全身麻酔とは違って意識がありますが、ウトウトしているような、まどろんでいるような状態になります。
効果としては、緊張状態をなくし、リラックスした状態を作り出せます。個人差はあるものの、あっという間に終わってしまったという感想を抱く方も多く、健忘作用があるので手術中の記憶がなくなってしまう方もいらっしゃいます。
静脈内鎮静法は安全性の高いものですが、リスクはゼロではありません。そのため、しっかりとした設備と知識のある医師がいる条件下で用いることが大切です。
静脈内鎮静法がおすすめなのはこんな人!
静脈内鎮静法は、医師が必要と判断した場合や、ご希望があった場合に用いられます。静脈内鎮静法がおすすめなのは、以下のような方です。
- ・手術が怖い・不安がある
- ・手術のことを考えると緊張してしまう
- ・手術のことを考えると血圧が上がってしまう
- ・口の中に器具が入ると吐き気を催してしまう
- ・局所麻酔の注射が怖い・苦手
通常は、外科手術をする際に局所麻酔を用いますので痛みは感じませんが、手術のことを考えただけで緊張し、血圧が上がってしまう方もいます。
そういった方には静脈内鎮静法で、リラックスして受けていただくのが良いと思っています。
静脈内鎮静法と全身麻酔の違い
静脈内鎮静法と全身麻酔とでは、色々な違いがあります。分かりやすい表にまとめましたので、ご覧ください。
静脈内鎮静法 | 全身麻酔 | |
意識 | ならない | なくなる |
呼吸 | できる | できない(人工呼吸器が必要) |
回復する時間 | 比較的早い | 遅い |
入院の有無 | 必要なし | 必要あり |
静脈内鎮静法は、全身麻酔ほど大がかりなものではありません。したがって、全身麻酔は入院が必要なのに対し、静脈内鎮静法は日帰りで治療を行うことが可能です。しかし、手術中のストレスを取り除き、スムーズに治療を受けることができるのです。
静脈内鎮静法の流れ
静脈内鎮静法とはどんなものなのか、実際どんなふうにしていくのかが分からないと不安だという方もいらっしゃいますよね。
そこで、静脈内鎮静法の流れをご説明します。
1.治療前の注意
治療の前日は睡眠をよくとり、体調をできるだけ良くしておきましょう。
- ・食事は手術の8時間前まで
- ・牛乳や軽食は6時間前まで
- ・水やお茶は2時間前まで
糖尿病や高血圧など全身疾患のある方は、かかりつけの内科医との相談が必要です。
当日体調に不安のある方は、事前に担当医に申し出てください。また、眠気が戻りにくい場合があるので、当日は自分で運転せずにタクシーなどで帰宅しましょう。
2.モニターをつけて血圧や呼吸を測る
手術中の意識状態をコントロールするために、呼吸や血圧を測るモニターを腕につけをます。腕に巻き付ける血圧計のようなものです。
手術中はモニターで随時確認しながら、点滴の薬の投与量を調整します。
3.点滴開始
点滴を開始します。薬は少しずつ流れるので、意識状態が自然に穏やかになっていきます。
意識状態をしっかりと確認してから治療に入るので、心配はいりません。
4.治療開始
薬が効いているかを確認して、治療を開始します。この段階で、すでにリラックスして眠気を感じている状態です。
5.点滴終了
治療が終わった後、点滴を終わりにします。点滴を外してから5分程度で意識が元の状態に戻ります。
6.治療後
眠気やふらつきがなくなるまで、休んでいただきます。意識や動作に問題がなければそのまま帰宅となりますが、できれば付添の方がいるのが好ましいです。
お一人で帰宅する際は、安全を期して自分で運転する乗り物は避けるようにしてください。
※インプラント治療全体の流れについては、こちらをご覧ください。
▶当院のインプラントについて
静脈内鎮静法が効かないことはある?
静脈内鎮静法が効かないということはほとんどありません。また、麻酔と同じで、静脈内鎮静法の薬が効かないうちに治療を始めるということはありません。
静脈内鎮静法は、患者さんがリラックスした状態で治療を受けられることを目的としています。間違っても不安が残っている状態で治療を行うなどということはありません。
静脈内鎮静法に副作用はある?
静脈内鎮静法に使用する薬は、歯科医院によって異なりますが、主にミダゾラム、プロポフォール、デクスメデトミジンなどが使われます。
現在服用している薬などがあり、上記の薬に対して禁忌のある方は、副作用が出るリスクが高いです。
薬剤を使用するため、副作用のリスクがない方に対しても慎重に行うのでご安心ください。
静脈内鎮静法が行えない場合もある
静脈内鎮静法は手術の恐怖をなくすのに有効な手段ですが、以下のような方は行えない場合があります。
- ・妊娠している方
- ・てんかんの既往歴がある方
- ・なんらかの理由で気道の確保が難しい方
- ・静脈内鎮静法の薬に対してアレルギーがある方※
- ・睡眠時無呼吸症候群の方
- ・呼吸機能や循環機能が低下している方
- ・長期間、向精神薬を服用している方
- ・全身疾患の関係で静脈内鎮静法の薬が使えない方
- ・緑内障の方
- ・プロテアーゼ阻害剤を投与中の方
- ・筋ジストロフィーの方
- ・重度の肥満の方
※卵アレルギーのある方も行えません。
妊娠している方は、流産の恐れがあるので静脈内鎮静法は用いることができません。緑内障の方は、症状が悪化する可能性があります。その他、不安のある方は、事前に担当医にご相談ください。
静脈内鎮静法を用いて安心してインプラント治療を受ける
静脈内鎮静法のメリットは、外科手術に対する不安や緊張、恐怖などを取り除き、リラックスした状態で治療を受けられるということです。健忘作用で術中の記憶がなくなりやすいというのも大きなメリットでしょう。
ただし、受けられない方もいらっしゃるというのがデメリットです。健康状態や全身疾患、既往歴、服用しているお薬などで不安がある方は、事前に担当医に相談してください。
- ◆この記事のまとめ
- 1. 点滴で鎮静効果や抗不安効果がある薬を投与する
- 2. 手術中はリラックス状態になる
- 3. 全身麻酔と違い、意識がなくならず回復も早い
- 4. 入院する必要がない
- 5. 術中は腕に呼吸や血圧を測るモニターをつけ、意識状態をコントロールする
- 6. 静脈内鎮静法が行えない場合もある