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インプラントを戦略的に使って失う歯を増やさないという考え方

インプラントは歯を失った時の治療法の1つというイメージが強くあります。しかし、将来的に失う歯を増やさないように、あえてインプラントを選択するという考え方もあります。

なぜ、入れ歯でもブリッジでもなくインプラントなのでしょうか?

今回は、歯を失った際の治療法に悩んでいる方に、ぜひ読んでいただきたい記事です。

 

目次

加齢により歯がなくなっていくしくみ

かつて、人間は年を取るに従って歯がなくなっていくのは当然と思われていました。

しかし、近年では厚生労働省と日本歯科医師会が推進する8020運動などの影響もあり、80歳で20本の歯が残っている人は、1993年の8.9%から2011年には25.1%にまで増えています。その一つを担っているのがインプラントと言えるでしょう。

ここからは、加齢に従って歯がなくなっていくしくみについて、簡単にご説明していきます。

 

歯は下の奥歯からなくなっていくことが多い

ほとんどの人は、下の奥歯(第一大臼歯あるいは第二大臼歯)からなくなっていきます。

食べ物を食べるときのことをちょっと思い出してみてください。前歯で噛みちぎり、その後は主に奥歯で小さくなるまで噛んでいませんか?

奥歯から歯がなくなっていくのは、前歯よりものを噛む回数が多く、かかる力も大きいためです。

 

咬み合わせの連鎖で徐々に歯がなくなっていく

奥歯がなくなって奥歯では噛めなくなると、今度は奥歯の前にある中間の歯をよく使うことになります。しかし、中間の歯を酷使することで、また、なくなった奥歯の方に歯が傾くことで、中間の歯も失ってしまいます。そうやって、力がかかる順から徐々に歯にダメージがかかって失っていってしまうのです。

歯の本数が少なくなくなると、咬み合わせの均衡が取れなくなって下の前歯が上の前歯を突き上げるような形になってしまいます。最終的には下の前歯だけが残っている、もしくはすべての歯がなくなってしまいます。

つまり、1本の歯がなくなることで、歯列全体のバランスが崩れて次々に歯を失いやすくなるというわけです。

 

インプラントにすることで歯がなくなっていくのを防ぐ

奥歯を1本失った時点でインプラントを入れると、咬み合わせのバランスを保つことができます。なぜなら、インプラントは入れ歯やブリッジに比べて噛む力が強いからです。その強さは、天然歯と同じくらいです。

▼インプラント・入れ歯・ブリッジの違いを分かりやすく解説!

インプラントを埋入することで、中間歯がなすすべもなくなってしまうという事態を、ストップすることができるのです。

インプラントで咬み合わせのバランスを保つことと、しっかりと清掃を心がけてインプラントを守ることで、歯を次々に失っていくのを防げます。これが、戦略的なインプラントを使うという考え方です。

ただし、加齢は全身にも及びます。全身疾患の影響や、身体機能の低下、認知症などで歯を磨くことが困難になることもあるでしょう。その場合には、インプラントを入れていても、やはり歯を失ってしまう可能性があります。

 

オーバーデンチャーにも移行しやすい

インプラントを入れていても歯を失ってしまった場合には、オーバーデンチャーへの移行もスムーズに行なえます。

元から入れていたインプラントは上部構造を調整し、更に数本インプラントを追加してオーバーデンチャーの支台にするのです。

 

オーバーデンチャーとは?

オーバーデンチャーとは、インプラントを支台とした入れ歯のことです。最低2〜4本のインプラントで、入れ歯全体を支えることができます。

 

オーバーデンチャーのメリット

メリットは、なんといっても少ないインプラント本数で入れ歯全体を支えられるということです。コストも抑えられますし、通常の入れ歯よりもしっかりと固定するので、痛みや違和感もほぼ感じません。

  • オーバーデンチャーのメリット
  • ・最小限のインプラントの本数で済む
  • ・通常の入れ歯のようにズレない
  • ・通常の入れ歯のように痛みや違和感を感じない
  • ・取りはずしてお手入れすることができる
  • ・コストが安く済む

 

通常の入れ歯はシリコンやプラスチックで密着させますので、噛む力に限度があり隙間に食べカスなどが入ってしまうこともあります。

合わなくなればズレたりふいに外れたりすることもあり、痛みや違和感を生じます。

しかし、オーバーデンチャーは骨に直接埋め込んだインプラントの上に、ネジや磁石で装着するので、しっかりと固定され、痛みやズレがほとんどありません噛んだ時の力も骨で受け止めるのでとても強いです。

たくさんの歯をなくした時にすべてインプラントにしようとすると、大変な額のお金がかかります。ですが、オーバーデンチャーなら数本のインプラントで済むというのも大きな特徴です。

 

オーバーデンチャーに移行する時の注意

1本のインプラントからオーバーデンチャーに移行する時に、歯科医師が注意することとして以下のようなことがあります。

  • ・上部構造や残存歯を長期的に管理していく
  • ・治療後のメンテナンスについて熟慮する

 

ひとつずつ詳しく説明していきますね。

 

残存歯を長期的に管理していく

口内は、年を経るにつれて隣接する歯が何らかの原因で少しずつ動いたり虫歯や歯周病になったりする可能性があります。

これ以上欠損歯を拡大しないために、隣接した歯との隙間の調整や、残っている歯を虫歯や歯周病にさせない長期的なケアが必要になってきます。

 

治療後のメンテナンスについて熟慮する

インプラントの上部構造はネジで接着していることが多いです。ネジが緩むとインプラントにグラつきが出てきたり、インプラントが出っ張って咬み合わせの歯にダメージを与えたりします。そのようなことが起こらないように、日頃から定期的にチェックすることが重要です。

何より、インプラントは歯周病にかかりやすく、一度かかると最悪の場合インプラントが抜け落ちてしまうことがあります。

インプラントを守るには、治療後の定期メンテナンスがとても重要です。

半年に1度は定期メンテナンスを受けるようにしましょう。

 

  • 定期メンテナンスで行うこと
  • ・インプラントのチェック
  • ・残存歯の健康チェック
  • ・細菌量の測定
  • ・歯垢や歯石の除去
  • ・プロによる徹底的なクリーニング

 

インプラントを使って歯を失うのを防ごう

いくつになっても自分の歯で食べたいですね

インプラントはただ失った歯を補うだけでなく、将来歯をできるだけ残すために戦略的に使えるものということがおわかりいただけたかと思います。

ブリッジや入れ歯も上手にケアしていけば長くもたせることができますが、噛む力や残存歯へのダメージのなさはインプラントにはかないません。

インプラントは自然な見た目も大きな魅力の一つです。80歳を過ぎても自分の歯で食べられることを目標に、インプラントを上手に活用しましょう。

◆この記事のまとめ
1. 歯は下の奥歯からなくなっていく
2. 咬み合わせが崩れると連鎖的に歯を失っていく
3. インプラントは咬み合わせのバランスを保つ
4. インプラントは後にオーバーデンチャーへも移行しやすい
5. オーバーデンチャーは最小限のインプラントを支台にした入れ歯
6. インプラント及びオーバーデンチャーは治療後のメンテナンスが重要