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インプラントと咀嚼の重要性について

昨今では咀嚼の重要性が色々なところで言われていますね。特に、高齢になるほど咀嚼力は健康維持においてとても大切です。

そして、歯を失った場合の治療法のひとつであるインプラントは、咀嚼力を維持する上でとても適しています。

ここでは、インプラントと咀嚼の関係について、詳しくご紹介します。歯を失って治療法に迷っている方は、ぜひ読んでみてください。

 

目次

咀嚼の10の役割

咀嚼にはたくさんの役割があります

咀嚼の役割は、なにも食べ物を細かく砕くことだけではありません。

咀嚼は私達の体の健康に対して、実に多くの役割を果たしています。以下に一つずつ取り上げて、詳しく説明していきますね。

 

1.食べ物を飲み込みやすくする

前歯で一口大にちぎられ小さくなった食べ物は、口の奥に運ばれて奥歯ですり潰されます。この奥歯ですりつぶす行為が咀嚼です。

咀嚼するためには前歯も奥歯も必要です。もしも前歯で食べ物を小さくできなければ、咀嚼するのに時間がかかってしまいますね。つまり、歯全体で協力して咀嚼し、食べ物を飲み込みやすくするのです。

 

2.消化吸収しやすくする

咀嚼は食べ物を細かくするとともに、顎付近から唾液を分泌させます。食べ物は唾液と混ざると柔らかくなり、食道にもスムーズに通るようになります。また、唾液には消化を助ける消化酵素も含まれています。

もしも咀嚼が十分になされなければ、唾液が不足して食べ物をうまく飲み込めずに嚥下障害などが起きるリスクが高まるでしょう。

食べ物を大きいまま無理に飲み込めば胃にも負担がかかりますし、栄養も消化吸収しづらくなります。

 

3.会話をスムーズにする

咀嚼により顎が動くと、唇や頬、舌の筋肉も自然に鍛えられます。もしも咀嚼機能が低下すると、頬や舌の筋肉があまり動かなくなり、喋りづらくなります。

表情筋も衰えるので、顔がこわばって笑顔も作りにくくなりますね。咀嚼機能は人とのコミュニケーションも左右しているのです。

 

4.虫歯や歯周病を防ぐ

咀嚼によって唾液がたくさん出ると、虫歯や歯周病の病原菌を抑制してくれます。唾液には抗菌物質が含まれているためです。

もしも咀嚼力が落ちてしまうと、唾液の分泌も減って虫歯や歯周病になるリスクが高まります。

 

5.成人病を予防する

よく噛むことは、肥満防止にもつながります。ご存じの通り、肥満は血糖値を上げますし、心臓や脳の梗塞、糖尿病などの原因にもなります。

脳が満腹感を感じるまでには、食べ始めてから15分〜20分くらい経ってからです。じっくりとよく噛んで食事をすることで、食べすぎるのを抑制します。

 

6.認知症を予防する

咀嚼して顎をよく動かすと、脳に刺激が伝わって認知症を予防することができます。

アルツハイマー症をはじめとする認知症で起こる記憶障害は、脳への神経伝達が正常にされないことが原因です。

日頃から顎をよく使って咀嚼することで、脳への神経伝達を促し、認知症を予防することができます。

 

7.老化を防ぐ

顔の筋肉や皮膚口周り、頬、舌、こめかみまでつながっています。あまり咀嚼をしないと、筋肉や皮膚が動かないので固くなり、垂れてきてしまうのです。

咀嚼をしっかりとすることで、これらの筋肉や皮膚が鍛えられて柔らかくなりほうれい線やシワができるのを防げます。顎のラインも引き締まりますよ。

 

8.うつや不安症を防ぐ

うつや不安性は、自律神経や神経ホルモンが関係しています。顎を動かすことは脳への神経伝達を促すほか、咀嚼のリズム運動でセロトニンというホルモンの分泌を促進するからです。

セロトニンは、幸せホルモンと呼ばれることで有名ですね。セロトニンは睡眠の質に大きく関係するメラトニンの材料です。咀嚼でセロトニンを作ることは、不眠症やうつ、不安症の予防にもつながります。

 

9.がんを予防する

唾液には、ペルオキシターゼなどの酵素が含まれています。ペルオキシターゼは食べ物に含まれる発がん性物質や活性酸素を抑制する酵素です。

唾液腺は口の中のあちこちにありますが、大きな唾液腺は顎付近にあります。つまり、しっかりと咀嚼をすれば顎が動いて唾液の分泌が促され、発がん性物質を抑制できるというわけです。

 

10.視力低下を予防する

咀嚼をすると、目周辺の筋肉も動いて血行が刺激されます。最近はスマホやパソコンを見る機会が多くなり、スマホ老眼という言葉も登場しましたね。

スマホやパソコンの画面をじっと見続けると、目の周りの筋肉水晶体を調整する組織が凝り固まって、目のかすみや視力低下を引き起こします。

咀嚼をして目のまわりの筋肉を動かすと、眼精疲労や老眼などの防止につながります。

 

咀嚼におけるインプラントの重要性

咀嚼がいかに全身の健康に深く関係があるか分かったところで、次は咀嚼とインプラントの関係をお話します。

 

インプラントはよく噛める

歯を失ったときには、入れ歯、ブリッジ、インプラントという3つの代表的な治療法があります。

しかし、入れ歯やブリッジは噛む力が弱く元の自分の歯とまったく同じには噛むことができません。しかし、インプラントは自分の歯と変わらぬ力で何でも噛むことが可能です。

  • ・入れ歯の噛む力→天然歯の1/3
  • ・ブリッジの噛む力→天然歯の約半分
  • ・インプラントの噛む力→天然歯と同等

 

また、2016年に発表された「咬合・咀嚼と認知機能」という研究によると、歯がまったくない患者4人に対して総入れ歯とインプラント・オーバーンデンチャーを3ヶ月装着したところ、インプラント・オーバーンデンチャーでは歯がある人と同じような脳の働きを確認しました。

”その結果,IOD では一次体性感覚野,一次運動野,補足運動野,前頭前野さらには視床,小脳など,過去の報告にある有歯顎者の結果14, 15)とほぼ同じ部位に賦活が認められた.”「咬合・咀嚼と認知機能」(大野晃教,木本克彦)より引用)

※IODとはインプラント・オーバーデンチャーのことです。インプラント・オーバーデンチャーは、インプラント2〜4本で義歯全体を支える治療法です。

 

インプラントは他の歯をダメージから守る

入れ歯やブリッジは、他の歯を支えにする治療法です。

入れ歯のしくみは、義歯の横にバネがついており、そのバネを両サイドの歯に引っ掛けることで装着します。使用し続けるとどうしてもバネをかけた歯にも負担がかかるため、元々は健康な歯も段々弱っていってしまうというデメリットがあります。

ブリッジのしくみ2〜3本が連なったクラウン(被せもの)で、失った歯を含む両サイドの歯にまたいで被せます。クラウンを被せるには、両サイドの歯を削る必要があるのですが、健康な歯を削れば虫歯や歯周病になるリスクが高まるのは否めません。

それに対してインプラントは、歯を失った部分の骨に直接埋め込むため、他の健康な歯にダメージを与えることがありません。しっかりとケアしなければインプラント周囲炎になるというリスクはありますが、毎日のケアは他の歯と同じく歯磨き程度です。

インプラントは他の歯にダメージを与えることがないので、全体の歯の咀嚼力を落とすこともありません

 

インプラントで咀嚼力を維持しよう

咀嚼力は口内や全身の健康を維持する上で、とても重要です。咀嚼機能がしっかりしていれば、認知症や老眼、成人病なども防げます。そして、自分の歯と同じような咀嚼力が望めるのがインプラントです。

インプラントは毎日のケアも簡単なので、高齢者にこそおすすめしたい治療法です。

◆この記事のまとめ
1. 咀嚼は嚥下や消化吸収を助ける
2. 咀嚼は口周りや顔の筋肉を柔らかくし、老化を防ぐ
3. 咀嚼は脳を刺激し、認知症予防やうつ予防につながる
4. 咀嚼はがんを抑制し視力低下を予防する
5. インプラントは天然歯と同程度に咀嚼力を維持できる
6. インプラントは残存歯にダメージを与えない