インプラントを検討していろいろ調べていると、時々「プラキシズム」という言葉が出てくることがありますね。
プラキシズムとは歯ぎしりや食いしばりの総称で、これらがあるとインプラント治療が難しくなります。
ここでは、プラキシズムがあるとなぜインプラント治療が難しいのか、仮にインプラント治療をするとどうなるのかについて、詳しく解説していきます。
また、プラキシズムの改善方法もお伝えしますので、ぜひ最後までお読みくださいね。
目次
プラキシズムとは
プラキシズムとは、以下の3つの総称です。
- ・グラインディング・・・歯ぎしり
- ・クレンチング・・・食いしばり
- ・タッピング・・・歯をカチカチいわせる
プラキシズムは非機能的運動(特に目的を持たない運動)で、主に咀嚼筋の活動によって発生します。
原因はまだ明確には解明されていませんが、ストレスや飲酒などがプラキシズムを引き起こすと言われています。
プラキシズムには、睡眠時に起こるものと覚醒時に起こるものがあります。それぞれについて、詳しく説明しますね。
睡眠時プラキシズム
睡眠時プラキシズムとは、睡眠時に起こるプラキシズムのことです。睡眠時に起きるプラキシズムが起こるのは、ノンレム睡眠の時が最も多いことが分かっています。
心拍数や筋電図などが図れる特殊な機械を使った調査によると、まずは視神経や自律神経などを司る大脳中枢が活発になり、その後口周りの筋肉が活動して食いしばりや歯ぎしりが起こります(参考:歯とお口のことならなんでも分かるテーマパーク80「歯ぎしり」)。
日中は歯ぎしりや食いしばりをしないのに、夜間だけプラキシズムのクセがある方は自覚症状がない場合が多く、知らないうちにインプラントに負担をかけてしまいます。
覚醒時プラキシズム
覚醒時プラキシズムとは、日中起きている間に起こる歯ぎしりや食いしばりのクセです。会話している時や、食べている時以外の時間に起こります。
覚醒時の場合は無意識だけでなく、意識的にしていることがあり、睡眠時プラキシズムよりは改善しやすいです。
プラキシズムがインプラントに及ぼす悪影響
プラキシズムが発生した時にかかる力は、約50〜80kg。人によっては100kgを超える方もいます。
これだけの力がかかれば、いくら歯が強いといってもダメージが加わることは容易に想像できますね。それが、インプラントにかかると、以下のような悪影響を及ぼします。
- ・インプラントの定着を阻害する
- ・上部構造を壊してしまう
こちらも詳しく説明していきますね。
インプラントの定着を阻害する
インプラントは、手術の後、骨との定着を待たなければなりません。インプラント体がしっかりと骨と固定されたら、はじめて人工歯冠を装着します。
インプラント体と骨とがしっかりと固定するまでには早い方で2〜3ヶ月、遅い方では6ヶ月ほどかかります。その間に強い力をかけてしまうと、インプラントがグラついてうまく定着できず、ひどい場合は脱落してしまうのです。
上部構造を壊してしまう
歯ぎしりや食いしばりが習慣になっていると、1日に何度も自分の体重以上の強い力が歯にかかることになります。睡眠時プラキシズムの場合は、抑制がきかないため100kgを超す力が加わっている場合も考えられます。
天然歯でもプラキシズムによって歯が摩耗し、知覚過敏を起こしたりするのですが、力がかかる場所がちょうどインプラントにあたる場合は、インプラントの上部構造がダメージを受けてしまうのです。
上部構造が壊れると「インプラントにトラブルが起きたのでは?」と思う方もいらっしゃいますが、よくよくお話を聞くと歯ぎしりや食いしばりのクセがあることが分かったりします。
せっかくインプラントを入れたのにトラブルが起きるのは避けたいですね。そのためにも、歯ぎしりや食いしばりのクセがある場合は事前に改善しておくことが望ましいです。
プラキシズムを改善するには?
プラキシズムは習慣化しているので、改善するのはそう簡単ではありません。
しかし、根気強く続ければ改善できます。プラキシズムは医学的には口腔機能異常と定義づけられており、歯医者でも治療を行っています。
プラキシズムを改善するには、具体的に以下のような方法があります。
- ・ストレスを解消する
- ・食いしばりを意識する
- ・マウスピースで負担を軽減する
ひとつずつ詳しく説明していきます。
ストレスを解消する
プラキシズムを改善するには、できる限りストレスを解消することです。
プラキシズムの原因は明確には分かっていませんが、ひとつにはストレスが深く関わっていると考えられています。
悔しい時や我慢している時、無意識に奥歯を噛み締めていた経験はありませんか? ストレスを感じる場面や頑張る場面が多いと、知らない間に歯を食いしばっていることが多いものです。
また、日中ストレスを感じている方が、睡眠中に思い出して食いしばりや歯ぎしりをしている可能性もあります。
先述しましたが、睡眠時プラキシズムが起こるのはノンレム睡眠時。つまり、まどろんでいる時や夢を見ているような時に、記憶として蘇って歯ぎしりや食いしばりをしている可能性が高いのです。
ストレスを解消する一番の方法は、ストレス源をなくすことですが、他人が関わってくると難しいですね。
そこで、ストレスを受けても発散できる場を作っておくが良いでしょう。
ショッピングや散歩なども一つの方法ですが、一番のおすすめは趣味に没頭することです。
なぜなら、自分の好きなことをしているとテンションが上りますし、好きなことに没頭することで脳を使い、充実感や達成感、自己肯定感が上がり、幸福感がストレスを上回る可能性が高いからです。
食いしばりを意識する
覚醒時プラキシズムがある場合は、食いしばりしている自分を意識し、食いしばりに気づいたら止めるということを繰り返します。
これは認知行動療法といいます。例えば目につくいくつかの場所に色付きの付箋を貼っておき、目についたときに歯を食いしばっていたら力を抜くという具合です。
認知行動療法は別名”自己暗示”とも呼ばれており、寝る前に「歯を食いしばらない」と強く念じるとプラキシズムが軽減するという例もあります。
こういった自分なりのルールを作っておき、実践することでプラキシズムを改善できます。
マウスピースで負担を軽減する
睡眠時プラキシズムがある場合で、どうしても改善しない場合には、寝ている間だけつけるマウスピース(ナイトガードやスプリント)を使います。
シリコン製のマウスピースを、インプラントと歯の間に挟むことで、かかる力の衝撃を緩和する方法です。
なお、マウスピースは歯並びに関係するので、市販のものでは歯並びを悪くしてしまう可能性があります。必ず歯医者さんで作ったものを使いましょう。
まとめ
プラキシズムはインプラントの定着を阻害し、咬み合わせ部分を壊してしまう厄介なクセです。
インプラントの治療前の検査により、歯の摩耗具合でプラキシズムが確認されれば、治療前に改善を提案します。もしも自覚症状がある場合は、もちろんお申し出くださいね。
プラキシズムを改善して、長持ちするインプラント治療を一緒に目指しましょう。
- ◆この記事のまとめ
- 1. プラキシズムとは歯ぎしりや食いしばりの総称
- 2. 睡眠時プラキシズムはノンレム睡眠時に起こることが多い
- 3. 覚醒時プラキシズムは無自覚で行っている事が多い
- 4. プラキシズムはインプラントの定着を阻害する
- 5. プラキシズムはインプラントの上部構造を壊してしまう
- 6. プラキシズムの改善には、ストレス解消・認知行動療法が有効
- 7. それでもダメな時はマウスピースで緩和する