「病院でインプラントが先進医療と認められると保障が使えるって本当?」
「インプラント治療で県民共済は使えるの?」
県民共済や生命保険には先進医療特約というものがあり、契約している方はこれがインプラント治療に当てはまるのではないかと思うことも多いようです。
インプラントは基本的に自由診療ですが、少しでも費用を抑えられるなら何でも利用したいですよね。
そこで、ここではインプラント治療と先進医療特約について、分かりやすくご紹介します。
目次
1. インプラントが先進医療と認定されていた頃と現在
インプラントが先進医療と認定されているかどうかといえば、現在は認定外です。その代わり、国が定めた条件を満たせば保険が適用されることになっています。
先進医療と認められるのは、厚生労働大臣が定める高度な医療技術を用いた治療です。
2011年度まではインプラント義歯も公的医療保険が使える先進医療の枠に加わっていました。しかし、2012年度からは限られたケースのみ、保険適用で治療が認められるようになりました。
1-1. 保険が適用されるインプラント治療の正式名称
インプラント治療が先進医療から除外されて新たな保険適用が制定された際、名称も「広範囲顎骨支持型装置および広範囲顎骨支持型補綴」に変わりました。
なんだか舌を噛みそうな難しい名前ですが、おそらく一般的なインプラント治療と区別するためと推測できます。加齢や歯周病などで歯を失った場合の一般的なインプラント治療は、保険適用外です。
また、広範囲顎骨支持型装置および広範囲顎骨支持型補綴で行われるインプラント手術は「広範囲顎骨支持型装置埋入手術」といいます。
2. インプラントで保険が適用されるケース
それではインプラントで保険が適用されるのはどんなケースなの?と知りたくなりますね。
インプラントで保険が適用されるのは、以下の5つのケースです。
- ・広範囲にわたりあごの骨を失った場合
- ・広範囲で失ったあごの骨を治療により再建した状態
- ・生まれつきあごの骨が欠損している場合
- ・生まれつきあごの骨が形成不全の場合
- ・生まれつき6本以上の歯がない場合
詳しく説明していきますね。
3-1. 広範囲にわたりあごの骨を失った場合
腫瘍や顎骨骨髄炎などの病気にかかり、あごの骨を広範囲で失ってしまった場合は、インプラント義歯が保険適用で治療できます。
顎骨骨髄炎とは、歯を支えているあごの骨が細菌などによって炎症を起こし、化膿してしまう病気のことです。
原因は虫歯や歯周病による感染、あごの骨の骨折からの感染、根管治療(歯の根の治療)で使う薬剤によるものなどがあります。
また、事故による外傷などであごの骨を大きく失った場合にも適用されます。
「虫歯や歯周病が原因でインプラントをする場合は保険が使えるの?」と早合点してしまいそうですが、あくまでも虫歯や歯周病がかなり悪化してあごの骨が広範囲で溶けてしまった場合や、治療のために切除した場合に限ります。 あごの骨の大部分が残っている一般的な虫歯や歯周病が原因のインプラント治療は、公的医療保険の対象にはなりません。 |
3-2. 広範囲で失ったあごの骨を治療により再建した状態
上記で説明したような状況で広範囲にあごを失った場合、物を噛むことができないし、見た目も気になりますね。この場合、骨移植などの治療であごの骨を再建することができます。
さらに、その状態で咬み合わせを回復させるにはブリッジや入れ歯では難しく、インプラント治療が選択されます。その際のインプラント治療は公的医療保険の対象となります。
つまり、病気や怪我で広範囲にわたって失ったあごの治療の一環としてインプラント治療をする場合ということです。
3-3. 生まれつきあごの骨が欠損している場合
生まれつきあごの骨が欠損している代表的な例は、無顎症や小下顎症です。無顎症は重度の不正咬合(咬み合わせが合わない)を起こすため、食生活や発音などに支障をきたします。
小下顎症は下あごが極端に小さく、舌が落ちてしまうのが特徴で、放置しておくと喉を閉塞して睡眠時無呼吸症候群などの様々なリスクがあるため公的医療保険での治療が認められています。
3-4. 生まれつきあごの骨が形成不全の場合
生まれつきあごの骨のバランスが左右で異なったり、上あごと下あごのバランスが極端にずれたりしている場合を指します。
多くは形成外科や頭蓋顎顔面外科などでレントゲンやCT検査を行い、診断されるものです。
もしもあごの骨の形成不全と診断された場合は、インプラント治療が保険適用となります。
3-5. 生まれつき6本以上の歯がない場合
最後に、広範囲であごの骨を失って保険適用でできるインプラント治療に2020年から加わったのが、「先天性部分無歯症」です。
先天性部分無歯症とは生まれつき6本以上の歯がない状態で、保険適用されるのはこれを含む以下のものです。
- ・生まれつき6本以上の歯がない場合
- ・前歯が3本以上生えてこない場合
- ・連続した1/3程度以上の歯が生まれつき生えてこない場合
4. 自由診療で費用を抑える裏技
今までの説明を見てくると、いずれも重度なあごの欠損などにしか保険が適用されないことが分かりますね。
しかし、一般的なインプラント治療でも、費用を抑えることはできます。
4-1. 分割払いにする
インプラント治療の費用相場は30万円からですが、分割払いにすることで月々の支払いの負担を減らすことができます。
分割払いの方法にはいろいろな種類があり、取り扱うローンは各クリニックによって異なります。
- ・クリニック独自のローン
- ・信販会社や銀行が販売する歯科専用ローン
- ・クレジットカード会社のローン
インプラント治療をする際には、事前にどの分割払いが可能か、自分の希望するローンを使えるかどうかを調べておくのがおすすめです。
4-2. 医療費控除を利用する
医療費控除とは、1年間にかかった医療費が10万円を超えた場合に所得税が安くなる制度です。
医療費控除を使うには、確定申告で申請する必要があります。申請する際には診断書や領収書が必要となるので、捨てずにとっておきましょう。
詳しい計算方法などは国税庁のホームページで知ることができるので、興味のある方はご覧くださいね。
5. まとめ
一般的なインプラント治療は、現在では先端医療の枠から除外されているため、生命保険や県民共済などの先進医療特約は使えません。
ただし、国が定めた条件を満たせば、公的医療保険が適用されます。
もしも病気や事故などであごの手術をした際、該当するのかどうかわからない時は、医師に相談してみましょう。
- ◆この記事のまとめ
- 1. 保険が適用されるインプラント治療は病気や事故で広範囲にあごの骨を失った場合
- 2. 病気や事故で広範囲であごの骨を失い、骨移植などで再建した場合も適用される
- 3. 生まれつきあごの骨が欠損または形成不全の場合は適用される
- 4. 生まれつき歯が6本以上、前歯は3本以上ない場合は適用される